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2017年5月2日

マラソンチャンピオンを作るための伝統と科学の融合

マラソン2時間の壁を破るためには、これまで最速のマラソン記録である2時間02分57秒よりも3%早く走る必要があります。つまり、26.2マイルのそれぞれ1マイルにつき、7秒早く走らなくてはいけないということです。多くの人にとっては不可能な挑戦に感じますが、ナイキにとっては追い求める価値のあるゴールなのです。

このサブ 2 レースの挑戦に向け、ナイキからの呼びかけに答えた勇敢なアスリートは、エリウド・キプチョゲ、レリサ・デシサとゼルセナイ・タデッセです。
世界最高の長距離ランナーたちを対象に、何ヶ月ものテストやデータ分析を繰り返し、この三人であれば、挑戦に耐える身体に仕上がっていると判断されました。しかし彼らと協力するという決断に至った理由の大部分は、彼らがもともと他のランナーよりも早く長く走ることができるという、シンプルな事実からです。彼らの長年の経験や技術の積み重ねが大きな武器になっており、そのため、Breaking2のコーチや科学者のチームは、日々のトレーニングや補給の戦略を大きく変えるのではなく最適化することが、これまでで最大の長距離ランニングの成果につなげる最適のアプローチだと考えたのです。

アスリートと彼らのコーチが、現在に至るまでのトレーニングプログラムを決定する上で重要な役割を果たしてきました。ナイキスポーツ研究所のナイキ エクスプロア チーム・ジェネレーション リサーチ担当ディレクターのブラット・ウィルキンズ博士と、ナイキスポーツ研究所の研究者で主任生理学者のブレット・カービー博士は、Breaking2を科学的側面から日々統括する役割を担っています。「エリートアスリートである彼らですから、優れたトレーニングプログラムがすでに確立されており、それがうまくいっているのです。私たちのゴールは、アスリートとそのコーチと協力して、分析結果やフィードバックを提供することです。」とウィルキンズは述べています。彼らが力を合わせることによって、サブ 2 マラソンの夢を実現できる可能性があるという理由を示すのです。

経験から最善の仕組みを見つける

トレーニングプログラムはアスリートと同じように進化する
キプチョゲの1週間のプランは多様かつ具体的、そしてプログラムを行うことによって積み重ねが生まれるものになっています。1日2回、ロングラン、トラックでのスピードワークとファルトレック(スウェーデン語でスピード練習を意味する)を毎週こなします。「エリウドは自分の身体をとてもよく分かっており、そのため、時には自分の反応や主観的な運動強度でペースを調整します。一方デシサが最初にフォーカスしていたのは、全般的な持久力で、そのためにたくさんの長距離走で、軽めから中程度の基本的なランを多く行いました。プログラム後半になると、スピードと強度を高めるためにトラックでのワークアウトを増やすようにしました。タデッセの戦略は、ほぼレリサの逆を行くもので、トレーニング前半には、スピード重視でレースのペースに身体を慣らし、後半にはスピードの持続時間を長く保ち、持久力をつけて、早いペースで長時間走り続けられるようにしてきました。」とカービーは話しています。

ウォームアップは(ほとんどの場合)シンプルに
三人とも典型的なシャッフルジョグ(=足を引きずるようなジョギング)を(時にはあまりにゆっくりのため、じっと立ったままで足を引きずるようにも見えることもあります、とカービーは説明します)、ペースを次第に上げていきながら30分行います。デシサと仲間にはこれに加えて、「儀式のように」ランニングの前に30分程度身体を動かす習慣があります。「まるでダンスをしているかのように見えます」とカービーは述べます。

チームワークは何より大事。一人のランも同じように大事
一般的に、アスリートたちはやる気を維持するためと、仲間意識から他の人と一緒に走ります。デシサには、彼が必要な時にあらゆる意味で助けてくれる6人から8人の仲間がついています。ロングランのときは、キプチョゲは最大60人程度の地元ランナー、プロランナーやコーチからなる大きなグループと一緒に走ります。それでも具体的な目的を持ったワークアウトの時には、一人で、あるいは2、3人と走ります。「ゼルセナイは一人で走ることが多いです。」とカービーは話します。

睡眠が最高の能力を発揮させる
3人のアスリートは、誰も標準的なクールダウンと考えられていることは行いません。彼らのトレーニングの最も大事な部分、特に週に100マイル(160km)以上走るアスリートにとって重要なのは、回復です。「ゼルセナイは、走っていなければ寝ているくらい、よく眠る男として知られています。」とカービーは述べます。デシサがトレーニングしていないときは、リラックスしています。キプチョゲはダウンタイムには、自分のキャンプでの日常生活と休息をバランスをとりながら行っています。「昼寝をしたり、チームメートとお茶を飲んでいる以外に、彼は井戸から水を汲んできたり、キャンプ地での作業も行います。」とカービーは話します。たいてい週に1度か、あるいは必要に応じて休息日を取っています。特にハードなトレーニングの後には、最大で週に3回マッサージを受ける人もいます。

ランニングが全て
彼らはウエイトをあげたり、ヨガをやったりはしません。ただ走るだけです。「早く走るためには、走らなくてはいけない。」とウィルキンズは話します。それぞれ全く違うものですが、各アスリートのトレーニングプログラムは常に進化し、技量に合わせ、非効率を抑えるため調整を続けています。「一般的にここまでのレベルのランナーはそれほど柔軟性はありません。」とウィルキンズは述べます。一般的に思われているのとは違って、研究によると、柔軟性が低いほうがパフォーマンスの高さにつながる傾向があるとのことです。「足が硬いほうがエネルギーロスが少ないという理論です。」とウィルキンズは話します。(彼はそれを、柔らかいバネよりも多くのエネルギーを蓄えて放つ硬いバネに例えます。)

日々の食事はゆるく
彼らほどのエリートになると、自らが自分のランニングのために良い食べ物を知っていますが、ウィルキンズとカービーは、炭水化物を50-75%、たんはく質を20-30%、残りを好きなもので摂取することを勧めます。また科学者たちは、トレーニング後の栄養補給についても具体的な指針を提供しています。例えば、きついトレーニング後はすぐにタンパク質と炭水化物を摂ることを強調したり、場合によって、もしアスリートがすぐに食事ができない場合には回復用の飲み物を摂ることを提案しています。

科学が伝統を進化させる

主要な数値から毎回のランの進化の方法を探る
このプロジェクトの使命を受けてから、ウィルキンズとカービーは何度となくランナーを訪ね、VO2max(最大酸素摂取量)、ランニング中に失われる水分量、筋肉で蓄えられるエネルギー量など、様々な分析を行ってきました。彼らがアスリートと一緒にいない時にも、電話やスカイプで定期的に連絡を続けています。トレーニングランの時、アスリートはGPS機能のついた腕時計と(胸のストラップに発信機のついた)心拍計を装着します。ランニングの終わりには、コーチと科学者たちが一緒にデータを分析し、アスリートのパフォーマンスや進捗を確認・分析します。集めた情報をもとに、コーチと科学者が相談の上、常にトレーニングプランを改良し続けています。

高地は優れた練習場所だと信じている。
3名のアスリートとも、高地で生活し、ほとんどのランニングをそこで行っています。キプチョゲのキャンプはケニア、デシサはエチオピアで、タデッセは(生活拠点のある)エリトリアと(コーチの住んでいる)スペインで活動しています。「高地は酸素が薄いため、長期的に生活すると赤血球の数が増えて、血液がよりたくさんの酸素を筋肉に運べるようになるのです。」筋肉の酸素量が増えると、その機能が良くなり、より遠くより早く走るために役に立つのです。」とウィルキンズは説明します。赤血球濃度が一旦高くなると、高地から離れた後も最大2週間その濃度は維持されるので、それが平地に来た時に優位に立つ一因となるのです。

レース中の栄養補給は個別かつ精密
科学者たちは、汗による水分損失を補うことと、エネルギーレベルを最大化させることにフォーカスしています。このため、彼らはレース48時間前と、きついトレーニング後の24時間の2つの時間帯と、補給のタイプとその運搬方法、個別のニーズの2つの分野にフォーカスを絞っています。「トレーニングプログラムを通じて集めてきたデータをもとに、彼らがランニングでどの程度の水分を失うか、彼らの胃がどの程度吸収できるかを理解し、各アスリートのために特製の炭水化物のミックスを作っています。」とカービーは話します。それ以外にも、一人一人異なるタイプや量の炭水化物、水分、味付けが設定されています。

補給の頻度も綿密に
各アスリートに関するデータの分析と、多くの試行錯誤の結果、Breaking2 チームはレース中のランナーの理想的な補給時間を決定しました。それは、2.4kmごとというものです(彼らが走ることになっている、イタリアモンツァ郊外にあるオートドローモ・ナツィオナレー・モンツァのトラック1周にあたります)。「つまりアスリートは7分ごとに特製ミックスを飲んで、水分とエネルギーを維持するのです。」とカービー。これはアスリートにとっては全く新しいことになる、と科学者たちは述べてます。というのもこれまでそれぞれのランナーは1時間に摂取する炭水化物量は60gに満たない量だったので、レースを走っているペースのままでより多くの炭水化物を摂取することに慣れなくてはいけなかったのです。

ウィルキンズ、カービーとすべてのBreaking2
チームメンバーはこれからもすべての情報や経験を生かして、キプチョゲ、デシサとタデッセの戦略に改良を加えていきます。「私たちはこのプロジェクトが始まってからデータを集めてきました。そしてアスリートからもまだたくさんのことを学び続けており、それらによって、レース当日を最高の状態で迎えられることになるのでしょう。ほとんどのランナーは、このようなレベルの個別対応や、テスト、コーチングなどを経験することはないでしょう。これらに、アスリートのメンタルの強さを加えれば、未開の境地に至る可能性が生まれます。科学の視点から何を行ったとしても、彼らは26.2マイルを1時間に13.1マイルの速度で走らなくてはいけないのです。それは大変驚異的なことなのです。」とウィルキンズは述べます。

Breaking2の詳細はこちらをご覧ください。
http://www.nike.com/jp/ja_jp/c/running/breaking2

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