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2016年3月17日

ナイキの最高峰のコラボレーション、HTMについて
マーク・パーカー、ティンカー・ハットフィールド、藤原ヒロシ氏が語る

HTMとは、フラグメントデザインの創設者である藤原ヒロシ氏、クリエイティブコンセプト担当のナイキ副社長ティンカー・ハットフィールド、ナイキインク 社長兼CEOのマーク・パーカーによるコラボレーションです。3名のイニシャルをつなぎ合わせたHTMは、ナイキデザインの新しいコンセプトを探求し、時に最新のテクノロジーの未来への活用を示唆しています。2002年の誕生以来、このコラボレーションからは、過去の名作をアップデートしたもの、ナイキ フライニットなど最新のテクノロジーを導入したものなど、32のプロジェクトが発表されています。以下は、3人が語る、ナイキで最も捉えどころがないとされるコラボレーションの歴史です。

始まり

藤原 ヒロシ: マークと一度目か二度目にあった時、まだCEOではなかった時に、「ナイキで何かやるとしたら、何をやりたいか?」と聞かれました。その時、シューズをカスタマイズしてアップデートできるプログラムをやりたいと答えました。

マーク・パーカー: 私は日本に行く機会が頻繁にあり、そこでヒロシと出会いました。もちろん、ティンカーとは エア マックス 1、エアトレーナー 1、ACG、ジョーダンなどのプロジェクトで既に何年もの間一緒に仕事をしていました。ヒロシと一緒にいる時に、プロダクトやデザインについて長時間話しました。ある日、私たちは、じっと座ってアイディアについて話し合うのではなく、行動を起こして何かを作ってみたらどうかと思いました。

ティンカー・ハットフィールド: 最終的にHTMとは、マークのアイディアだと確信しています。今思うと、これは彼好みであり、彼は適した人材を集める術を本当に心得ているのです。

マーク・パーカー: 最高のパートナーシップは、本物の関係から生まれると常に信じてきました。HTMもまさにそのように結成されました。自然に生まれたのです。

藤原 ヒロシ: 他社で、コラボレーションを表現するために頭文字を使っていた例があり、コードネームとして、ヒロシとティンカーとマークを表現する「HTM」を使いました。でも、まさかそれがそのまま公式の名前になるとは思っていませんでした。

マーク・パーカー: 初めは他の人たちには何の意味もなさなかったと思いますが、“HTM”と自分たちの頭文字を付けて、このプロジェクトだけのアイデンティティを確立しました。シンプルな名前ですが、この制作過程において、私たち一人一人が貢献しているということを表すようになりました。

知識や技術を補い合う

マーク・パーカー: 私たちはそれぞれスタイルも仕事へのアプローチも異なります。そして、その分最終的に出来上がる作品がより素晴らしいものになると思っています。その過程は、ジャズミュージシャン達がそれぞれリフを演奏し、お互いのアイディアを膨らませていくジャムセッションに例えることができるかもしれません。3人の誰かが気になっている具体的なアイディアをベースにすることもあれば、もっと自由に考えを出し合うこともあります。
ヒロシは、どちらかと言うとスタイリスト・デザイナーで、スタイル、着用性、シンプルさに対する感性がとても高いです。日常生活におけるデザインのあり方に対して鋭い眼を持っています。
ティンカーについては、これまでの素晴らしい作品自体が彼の役割を明らかにしています。彼は、ただのシューズではなく、世界がそれまでに見たことのない人間性に溢れる商品開発の先駆けとなりました。
アスリートの表面に隠れた真の姿(スポーツだけでなく私生活に関しても)を浮き彫りにするという共同制作の土台を作り、ストーリー性のある高性能な商品を作りました。

ティンカー・ハットフィールド: マークはいつも変わらない役割を務めています。彼はデザイナーですが、ディベロッパーでもあり、ナイキ スポーツラボにいたこともある。さらに、彼はいつも誰と一緒に仕事をするのが良いか、どんなプロジェクトを手掛けたら良いのかを選び取る能力を持っています。また彼は今あるものを洗練させたり、編集したり、組み合わせ直したりすることに関しては天才です。美しくまとめあげられた彼のオフィスが良い例です。アートがあり、様々な人々のことを物語る思い出の品が寄せ集められているようで、なぜかそれが上手くまとまっている。これは彼の思考を象徴しているようでもあります。

マーク・パーカー: 3人それぞれの役割はコンセプトによって変わります。
また音楽で例えると、各プロジェクトの『センターステージ』に立つ人は、その都度自然に交代します。1人のデザイナーの影響が特に強くなり、商品にもその特徴が見えることがあります。

好機

マーク・パーカー: HTMは遊んだり、実験したり、新しいコンセプトを試す場所です。商品化を期待されることなく、自由に取り組むことができ、少人数のチームなので、非常に早く実行することができます。またHTMがデザインチーム全体にインスピレーションを与えることもあります。これまでに私たちはこの会社の既成概念を変えてきました。例えば、ウーブンを採用した際、当時多くの人が驚いたかと思います。ソック ダートの開発は、ニット技術活用の最先端でした。また、フライニット技術を一連のHTMシューズで採用し、新しい技術でシューズの外観をどこまで変えられるかということを強く打ち出しました。

HTMのコラボレーションの発表は2002年、アイコニックなエア フォース 1をユニークな形に表現したものから始まりました。これは、日本のオタクカルチャーにも通じる目利きならではのアプローチで、ドレスシューズのようなブラックやブラウンの柔らかいプレミアムなレザーを使用し、フットベッドには対象的な色でHTMのステッチを入れるなど、巧妙なディテールを加えて仕上げたシューズでした。

ティンカー・ハットフィールド: 当初、HTMはクラシックなデザインをより良い形に表現するために、意外な色や素材を使ってみるという場所でした。

藤原 ヒロシ: あの時はまだ、ラグジュアリーなスニーカーがまだ一般的ではなかったので、そこで初めてHTMがそういう感覚を持ったスニーカーを提案したということだと思います。

マーク・パーカー: 実際に、HTMには制約というものがありません。通常は大量生産しない商品を作るので、最高の素材を自由に使うことができます。高級な革を使って、プレミアムなエア フォース 1を作りたいと考えました。また、力強い配色をする代わりに、シューズの洗練されたシルエットを強調し、縫い目に対比する色をあしらいました。

HTMは2004年、デザインの新しいコンセプトへと進化しました。その中でも特に斬新だったのがナイキ ソック ダートです。画期的なシューズの世界を開いたとされるナイキ ソック レーサーをもとに、コンピュータを使用したニットの技術をアッパーに採用し、シリコンのストラップでサポート性を高め、先進的な外観のソールと組み合わせています。

ナイキの未来を垣間見せる

マーク・パーカー: ソックダートは、ティンカーのチームが丸編機で遊んでいて生まれました。あのシューズは、1980年代半ばのソックレーサーから始まった、靴下のような商品開発行程の一部で、最終的にフライニットの平編み製法に繋がる重要な一歩となりました。

ティンカー・ハットフィールド: 私もソックダートのオリジナルのデザインに関わった一人なのですが、あれは丸編みも使ったとても難しいプロジェクトで、みんなにはこれは未来のフットウエアのデザインだと話していました。最初に発売した時にはたくさん生産せずに、実際に誰の目にも止まりませんでした。しかし私の記憶ではそれから間もなく、ヒロシがそれをHTMでやりたいと言ったのです。

藤原 ヒロシ: その後、何度かマークとティンカーに、「あの靴は面白い、近未来的だから再発したい」と提案しており、それがようやくHTMに採用されました。

ティンカー・ハットフィールド: 正直に言うと、私がこのようなプロジェクトに参加する理由の一つは、かつて誰の目にも留められなかった、埋もれた宝物を掘り起こす機会となるからです。そこで未来のデザインへのひらめきを得ることができます。ニット素材に関してもたくさんの研究を行っている時期だったので、ソックダートはその後のプロジェクトにたくさんの示唆を与えてくれて、これが本当に先進的、近未来的なシューズだと認識させられました。

マーク・パーカー: 最終的にフライニットの平編み製法に繋がる重要な一歩となりました。それは、ナイキを将来的に盛り上げてくれるような商品に取り組んでいたことになります。

藤原 ヒロシ: HTMでは、どちらかというと、あるものをアップデートするというよりも、新しいアイデアを最初にお披露目するという感じです。

その8年後、画期的なフライニット テクノロジーの発表というかたちで、ナイキのニットが大きな進化を見せています。HTMは、ナイキ HTM フライニット レーサーと、ナイキ HTM フライニット トレーナー+でこのサポート性、軽量性と環境持続性に優れたテクノロジーを紹介し、新しいコンセプトの起爆点となりました。

マーク・パーカー: すぐにその素晴らしいフライニットのポテンシャルを感じました。パフォーマンス商品のエンジアリングのルールを書き換えることになったことが明らかでした。従来の裁断・縫製の代わりにフライニットを使用することで得られる進歩を目の当たりにした時、エアブラシとコラージュを比べたかのようでした。非常に精密な工程で、糸と編み方の両方を操作して、サポート性、屈曲性や通気性などどのような機能性でも細かく加工できるようになりました。

藤原 ヒロシ:フライニットのシューズはシンプルに見えて、とてもテクニカル。本当にすごいテクノロジーだと感じました。しかし、初期のサンプルではあまりニット感がでていませんでした。「ぱっとみてニットだとわかる方がコンセプトが伝わりやすいので、いろいろな色の糸をミックスして表現したほうがいいのではないか」というアドバイスをしました。それまでは、割とソリッドだったんです。最終的に、機能性に美を融合させて、本当に美しいシューズに仕上げることができました。

ティンカー・ハットフィールド: HTMは既成概念を打ち破るようなテクノロジーを市場に出すのを、ある意味楽にしてくれるとも言えます。まず発売したことを伝え、人々にテクノロジーに気づいてもらう、そしてそこから大きく展開することができる。その点、私にとってはフライニットの発売のやり方は、HTMの目的やポテンシャルに一番適したものだったと思います。

2014年、HTMはパフォーマンスバスケットボールの分野に進みました。KOBE IX ELITE LOW HTMは初のローカットのナイキ フライニットのバスケットボールシューズであり、コートとカルチャーの境界線を越える存在になりました。斑模様のシューレース、HTM特製アグレット、リフレクティブ素材を用いた蛇の鱗のようなパターンは、シリーズに共通するディテールへのこだわりと、ブライアント自身のフットウエアへの妥協のない姿勢を反映するものです。

コービーとの作業

藤原 ヒロシ: KOBE IX ELITE LOW HTMは、フライニットの進化を祝福する機会になりました。はじめはランニングに用いられていた技術が、バスケットボールのようにハードで、斜めにも動くようなスポーツにも使えるほど進化しました。

ティンカー・ハットフィールド: もちろん、私がデザインしたシューズではありませんが、開発の間ずっと(デザイナーの)エリック・エイバーの隣の席に座っていましたし、個人的にはこのシューズはこれまで作られた中でも最も手の込んだ、とてもよくデザインされ、数々のテストを乗り越えたプロダクトだと思います。

マーク・パーカー: コービーは常に最新のイノベーションが搭載されたフットウェアを求めるので、HTMとして初めて手がけるシグネチャーアスリートモデルが彼のシューズというのはふさわしいように思えました。楽しんで作りました。コービーも喜んでいました。彼もスニーカー好きなので、HTMのシューズができたことを喜び、誇りに思ってくれたと思います。

HTMのレガシー

マーク・パーカー: (当初)HTMは自然に何か面白いことを考え、それを作りたいという基本的欲求から生まれました。その過程は会社のデザインに対するアプローチを象徴するものです。ナイキはHTMの探索には最適な場所です。

ティンカー・ハットフィールド: この会社は新しいイノベーションや、誰もやったことのないものを実現し、それを基礎にしてきました。HTMはこの究極の目的を実現する、最も明確な道のりの一つになっています。関わったことを名誉に思える、とても得るものの多いプロジェクトです。同時に、とても楽しい。ルールを破ることが前提だからです。楽しくないわけがありません。

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