2015年3月20日
ゼロとは、数学の世界では無、つまり何もないことを意味するために作られた数字です。
ただし、ナイキにおいてゼロは、ゼロ以上の意味を持ちます。それは始まりであり、起点であり、すぐれたものが創出される瞬間のひらめきを意味します。
29年前に紙に描かれたゼロというひらめきは、30余年にわたるイノベーションが既に盛り込まれたものでした。そのゼロがエア マックス ゼロとして生まれました。これは初めて発売されたナイキ エア マックスではありませんでしたが、このひらめきがなければ、ナイキ エア マックス 1は生まれることはありませんでした。
ナイキ エア マックス ゼロは、最初の1歩であり、前衛的な存在でした。
「指示書も研究結果もなく、一つの思いつきから生まれたのです。」とナイキフットウエアの伝説的デザイナー、ティンカー・ハットフィールドはビジブルエアのスケッチを始めた頃のことを振り返ります。「ナイキ エアとは、どのようなものなのかを世界中にみせられる、刺激的な新しいランニングシューズをデザインするべきだと思ったのです。」
その頃、ナイキ エアは、既に熱心なランナー達から高い支持を得ていました。しかし、ハットフィールドは、その結果に満足していませんでした。足の下のエアの感触をもっと広く伝えたいと考えたのです。
「エアソールユニットは、どんどん大きくなっていましたので、それをみんなにみせる方法とより理解してもらえる方法を考えていました。」とハットフィールドは述べます。
ハットフィールドは、その答えをパリに赴いた際に見つけることになります。建物の共有部分がむき出しになっているポンピドゥセンターを目にし、そのユニークなビルのデザインに刺激を受けました。そしてオレゴンに戻り、ビジブル エアのコンセプトを画期的なランニングシューズの形に表現したのです。
しかしそこからナイキ エア マックス 1がすぐに生まれたわけではりません。幾つものデザインが作られたあとにやっと生まれたものであり、その過程の初期段階にエア マックス ゼロのコンセプトも存在していたのです。それは並外れた快適さと機能性のために必要な物だけを用いたシューズで、何年後かにようやく製品化されたデザインやアイディアがいくつも搭載されてました。
「ミッドソールは、よりミニマルに仕上げるために、足へのサポートが必要な部分に対しては、要素を加え、不要な部分は削ぎ落とすなどを考えていました。」とハットフィールドは述べています。
アッパーは快適さとフィットの良さを重視したデザインで、つま先にあえてパーツをつけないアイディアは1985年のソックレーサーから転用されています。さらに、スケッチの中ではヒールカウンター素材の代わりに外側からストラップを取り付けてありますが、これは1991年のナイキ エア ハラチで実現されています。
「これはハラチが生まれる前のものです。サンダルのかかとを包む部分と、かかとの骨の上を覆うデザインになっています。」とハットフィールドは思い返します。
実際のところ、彼のもともとのデザインは、あまりにも時代を先取りしていて、当時は生産できなかったのです。
「あらゆる意味で、先を行くものでした。」とハットフィールド。「外見だけではなく、生産の面についても同じです。当時の技術や素材ではまだ本来のビジョンどおりに物を作ることができなかったのです。」
現実に直面したハットフィールドは、デザインを変えざるを得なかったのです。しかし、その過程が、唯一無二のモデルにしてランニングシューズ業界の変革の原動力となったナイキ エア マックス 1の誕生につながりました。間もなくビジブル エアはランニングからバスケットボールにも採用されるようになりました。そしてナイキ エア マックスはランニングシューズという枠を超えて世界中で認知され、ライフスタイルの定番となりました。
エア マックス ゼロのオリジナル・スケッチ
その盛り上がりの中で、エア マックス ゼロは徐々に忘れ去られていきました。しかし、ナイキ・アーカイブ部門に29年間眠っていたスケッチを2年目となるエア マックス デーに向けてアイディアを探しているナイキ スポーツウェアのデザインチームが見つけ出し、その事態を一変させたのです。
「エア マックスのアーカイブ資料があり、そこには初期の試作品や日の目を見なかったサンプルなどが揃っていました。」とナイキ エア マックス ゼロを生き返らせたナイキデザイナー、グレアム・マクミランは述べています。「まるで考古学資料を掘り返すように、その場にいないと普通は見られないものばかりでした。」
チームは、そのスケッチの由来を理解すると同時に、何をするべきか悟りました。
「実現しなかったプロダクト のスケッチでした。」とマクミラン。「もしこれを世界の人々にも見てもらえれば、エア マックス・シリーズが生まれるまでの道のりに光を照らすことができると考えたのです。」
皮肉なようにも感じますが、ハットフィールドのスケッチに対してマクミランが抱いた最初の印象は、かなり的を得たものでした。
「エア マックス 1をもっと現代的にしたもののように見えました。」とマクミラン。
彼は即座にインナースリーブやシューズ先端のユニークな形状と、ハラチやソックレーサーとのつながりに気づきました。同時にハットフィールドの古いスケッチを理解し、形にするという責任の重さも感じ始めていました。
「デザインが意図したことに忠実に、そのデザインにふさわしいものを作る責任があります。さらに現代のイノベーション要素を付け加えて、エア マックス 1が発売になった1987年にはできなかった方法でシューズを作る責任もあります。」とマクミラン。
ハットフィールドとマクミランが初めて打合せたをした際、当初のデザインの意図であった究極の快適性についてハットフィールドから説明がありました。
デザイナーのティンカー・ハットフィールド(左)とグレアム・マクミラン(右)
スケッチを未来の形に変えつつ、ハットフィールドの目的を達成するためにマクミランは最新のナイキ・イノベーションを付け加えるという挑戦に乗り出しました。新しくエア マックス 1 ウルトラ モアレに用いられた、真ん中をくり抜いたファイロンのアウトソールや、サポート性を犠牲にすることなく素材のかさばりを抑えるフューズ製法のアッパー、通気性を落とすことなく特徴的なつま先を作るために単繊維(モノフィラメント)の糸を用いたメッシュなどの技術も用いています。これらにより、ハットフィールドが産み出したコンセプトが形になりました。1が生まれる前の形です。
「凄く気に入っています。」とハットフィールド。「現代の素材や製法が生かされていますが、それによってやっと出来上がったのだと思います。過去のものがこうやって今になって出来上がった。もし私がこのプロジェクトを担当していたら、私も彼らのチームがやったのと同じように新しい素材を用いていたことでしょう。」
NIKE AIR MAX ZERO / 17,280円(税込)
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