2015年10月27日
走り始めると、すぐに体温が高くなり暑くなってしまうのは、すべてのランナーが経験することでしょう。その時に重ね着しているものを脱ぐ一方で、身体は体温調節のために汗を出してそれを蒸発させ、最適な体温を維持しようとします。
身体が過熱することなく、早く、長い距離を走るためには、体温調節機能が必要です。しかし、身体が体温を下げようと努力すればするほど、最高の運動能力の発揮が難しくなります。ここで、力を発揮するのがナイキエアロリアクトテクノロジーです。ナイキ エアロリアクトは、ナイキ エクスプロア チーム(NXT)・スポーツ研究所と世界中のランナーの知見を生かして開発された、新しく、環境に適応する軽量な素材です。
「アパレル業界は常に重ね着という概念を基本に考えてきました。その一方で、私たちは環境に適応するアパレル、たとえば、走っている途中で身体温が上がったり、周囲の天候が変わった時に、自分で調整しなくて済むものはどうしたら作れるのかを考えました。」とNXT アパレルイノベーションチームのブライアン・スチュワートは話しています。
エアロリアクトは、ランナーの体温変化に対応するユニークな技術です。身体が本来持っている体温調整能力をサポートし、汗の蒸散を2つの性質を持つ糸で作られた素材が感知すると、素材の構造に隙間を作ることで通気性を最大限に高めます。
「アスリートがもっと快適に、集中して能力が発揮できるように、私たちは何ができるのかに常にフォーカスしています。エアロリアクトは、アスリートや彼らの環境の変化に応じる能力を持ち、着ている間中ずっと快適に保つ働きをします。」
ナイキでは、エアロリアクトの開発のため、素材研究、試験、試作などに数年を費やしています。その後、世界中のランナーに試作品が送られ、そのテクノロジーがテストされました。
ランナーのフィードバックがチームの仕事の評価にもつながると、ナイキでエアロリアクトのイノベーションプロジェクトのディレクターを務めたピーター・ハリソンは次のように話しています。「たくさんのランナーが驚いていました。
走っていると、暑すぎたり、寒すぎたり感じることがあるのに、それを感じる前にランニングが終了してしまい、さらにエアロリアクトを着ていることさえ忘れるほどだったと言っていました。これは素晴らしい答えです。というのも、アスリートには着ているものに気をとられることなく、好きなこと、一番得意なことに集中してほしいと思うからです。」
ウイメンズのナイキ エアロリアクト プルオーバートップと、メンズのナイキ エアロリアクト ハーフジップはNIKE.COMで販売しています。体温調整に関する情報は、ストーリーをお読みいただくか、あるいはポッドキャストをお聞きください。
ほとんどの人は病気ではない限り、体温計で体内温度を測ると、およそ37度と表示されます。身体は常にこの深部体温が一定になるように調整を行っています。体温は健康を示す基本的な数値の一つです。アスリートにとっては、ラップタイムやその他様々な数値と並ぶ、重要なパフォーマンス指標の一つです。この数値がアスリートの持久力、筋力をはじめ、究極的には競技での成否を決めることもあります。
■人間の気候管理
体温調節(thermoregulation)というと高等な言葉であるように感じますが、実際にその通りです。これは(特に人の体温の場合)大変複雑なもので、難しいものでもあります。”thermo”とは、温度に関することを意味し、“regulation”とは調節することを意味します。つまり、体温調節(thermoregulation)とは生物の周囲の温度が変化するときに、その生物がそれに対応し、一定の深部体温を維持しようとする動きを指します。
「要は、体温調節とは建物でいうセントラルヒーティングやエアコンのシステムが人間の身体の中にあるようなものです。」と、ナイキエクスプロアチームスポーツ研究所で、応用アパレル研究担当ディレクターのバリー・スピーリングは述べます。
彼の説明によれば、サーモスタットが一定の温度、例えば22 度に設定されると、冷暖房のシステムはあらゆる方法でその温度になるように建物を温めたり冷やしたりしようとします。外気がどうであれ、システムは建物を快適な22度に保とうとするのです。
さらに、スピーリングの説明によると、人間の身体は最適な体温を保つためにあらゆることを行うといいます。汗は身体の冷却材で、暑くなると体内のエアコンがたくさん汗を作り出そうとします。これは、汗が蒸発すると同時に体温を奪い、下げるからです。一方、寒くなると身体は無意識のうちに震えだして熱を生み出そうとするのです。
アスリートの身体でも、トレーニングのたびに、このような体温調節が行われています。それは良いことなのですが、一つ問題が残ります。それは、体温が上がり過ぎないように身体が頑張れば頑張るほど、最高の運動能力の発揮が難しくなるということです。
ここで、スポーツの世界でも昔から仕事の場で生かされてきた知恵が働きます。それは、「単に一生懸命仕事をするのではなく、頭を使って賢く仕事をしろ」ということです。アスリートがパフォーマンスに集中できるように、身体の自然な体温調節をサポートするもの、つまり彼らが身につけるものを進化させるため、賢い頭脳が生かせるはずです。
■調節の進化
トップレベルの生理学者、生物化学者、認知科学者らが所属する、ナイキ エクスプロアチーム・スポーツ研究所は、上記を目標に研究を行っています。
世界中の競技施設の気温や湿度を再現できる環境調整室など最新の技術を駆使し、あらゆるレベルのアスリートの協力を得て、様々な素材や、それを使うことにより、異なる気温や異なる運動の強度によって体温がどう変わるかをテストします。ここで、ハルの存在も忘れることはできません。
「ハルは私の大好きな社員です。」とスピーリング。ハルとは、歩行、発汗や体温変化が可能なマネキン人形で、(アパレルから熱が奪われることを防ぐ保温能力である)熱抵抗から、(アパレルが汗の蒸発を促す能力をさす)蒸発耐性まで、あらゆる測定を可能にしてくれます。
「私たちは研究室で、運動能力(パフォーマンス)、認識、保護という3つの視点からアスリートを考えています。(イギリスの童話、「三びきのくま」にちなんで)ゴルディロックス・モーメントとも言えるのでしょうが、体温がちょうど良い状態の時には、そのちょうど良い体温のおかげでより良いパフォーマンスができるのです。」とスピーリングは説明します。
■寒さと暑さ
ナイキエクスプロアチーム・アパレルイノベーショングループの実力がここで発揮されます。研究室から得た知識を元に、画期的な素材技術開発に生かすのです。最近では、何年もかけてイノベーションの進化が続いている、ナイキエアロリアクトの開発などもその成果に挙げられます。
エアロリアクトは単なる素材ではなく、リアルタイムでパフォーマンスを感知し(そしてそれに反応する)ウエアラブル(=身につけられる)技術です。ウォーミングアップ中、身体が汗をかき始めると、エアロリアクト繊維は水蒸気を感知し、素材の織り目を開いて通気性を最大限に高めます。
たくさんのアパレルイノベーションは、ナイキエクスプロアチーム・アパレルイノベーショングループやスポーツ研究所から生まれています。ナイキサーマス フィアマックスは、寒い気候に向けて作られた3 層構造の素材で、ナイキ スフィアの節を盛り上げたような構造技術により、身体の周りの熱を抱え込み、重みを増すことなく着る人の身体を暖かく乾燥した状態で包みます。
一方、ナイキエアロロフトは、寒い時にアスリートを暖かく、しかし暖かくなりすぎないようにするという課題に対応する技術です。ダウンの超軽量な断熱層が暖かさを蓄える一方、レーザーで開いた小さな通気孔が余分な熱を逃がします。
さらにナイキプロハイパーウォームは、寒い気候の屋外でワークアウトするアスリート向けに設計された素材です。部位ごとに異なる手触りにした素材を組み合わせて身体にフィットする一枚のガーメントを作り上げ、重ね着をしても、一枚だけでも着こなすことができます。
チームは単に寒さだけではなく、暑さへの対応も考えた素材設計や選択を行っています。ナイキDri-FIT技術は、身体から汗を吸い上げて乾いた皮膚の状態を保つイノベーションであり、一方、ナイキプロハイパークールの超軽量な素材は、身体の運動中の通気性を高めるために背中に目の粗いパターンを組み込んでいます。
どんな場所でも、どんな気象環境であっても、これらのイノベーションは身体が持つ優れた体温調節機能をサポートし、単に気持ちのよいワークアウトから、マインドと科学と身体が生み出す最高傑作へとパフォーマンスの可能性をさらに高めていきます。
http://news.nike.com/news/nike-news-presents-the-science-of-just-right-podcast
[0:00]
Narrator: 若いランナーがいました。
強い意志と意欲を持ちパーソナルベストを目指す道のりに走り出しました彼女の走る速さは、まるでキツネのよう、しかし風がそれを阻みます
Athlete: まあ、寒いわ
Narrator: 寒さで手が凍えます。でもシューズは明るく目立ちます
Athlete: よし、いくわ
Narrator: 息を切らして走ります
Athlete: このために外に出たんだもの
Narrator: 深部体温が上昇すると視床下部から指令が出ます「さあ、汗腺よ!汗を出すのだ」
Athlete: ししょう・・・なに?
Narrator: ホメオスタシスの働きで、汗が目に入ります
Athlete: 身体と対話してるわね
Narrator: 彼女の汗が蒸気になります
Narrator: 体内の温度計が調整しようとしています
Athlete: 暑いわ
Narrator: さあ!体温調節!ヒロインは集中しています。
一歩進むごとに汗が蒸発し、深部体温が安定します。そして彼女はこう言います
Athlete: はあ、ちょうど良いわ
[1:18]
Julia Lucas: 暑すぎず、寒すぎない。その状態を実現することによって、アスリートが環境に左右されることなくトレーニングできるのです。これは誰もが、たとえば朝のランニングや冬のピックアップゲームの時に経験済みです。たくさん重ね着をしすぎると、最初は良くてもすぐに暑くなってしまいます。薄着でいると、身体が温まるまで凍えた状態でいなくてはいけません。常にちょうど良い状態が維持できたらどうでしょう?
こんにちは。私はジュリア・ルーカスです。かつてはプロの陸上選手として活躍し、現在はニューヨークシティでNike+Run Club のコーチをしています。これまでずっと、雨、みぞれ、雪やあられの中でも走ってきました。今日は、凍えるような風や、うだるような暑さの中でも深部体温を一定に保つ身体の仕組み、つまり体温調節についてお話をしましょう。その中には、研究者、デザイナーや汗をかくロボットが、科学的データを生かして新しいスポーツ用のアパレルを作るお話しや、また、どうして自分の身体のことを家のセントラルヒーティングのように考えるべきなのか、あるいはどうして重ね着をすることが古い車を運転することにも例えられるのかというお話しもします。また、サルサダンスをするアスリートとの話から、試合の日に身体を暖かく維持することについても学びます。
[2:19]
Barry Spiering: ゴルディロック(3びきのくま)の物語にあるような瞬間といえます。つまり体温は高すぎても、低すぎてもよくない、ちょうど良い状態が大切なのです。
Julia: ちなみに今話したのは、バリーです。
Barry: ナイキエクスプロアチーム・スポーツ研究所で応用アパレル研究のディレクターを務めるバリー・スピアリングです。
Julia: バリーと彼のチームでは、様々な状況の中でのアスリートの反応を測定し、データを集めています。バリーによれば、体温調節は家の中にあるサーモスタットに似ているとのことです。
Barry: だから、たとえば家の中をちょうど22度に保ちたい時には、、、
Julia: 身体も、家と同じように、温度に注意しています。
Barry: その家の中の気温が22度よりも高くなると、冷却機能、つまりエアコンが入って、温度を22度に下げようとします。そして気温が下がりすぎて22度以下になると、今度は暖房設備が働いて、22度まで温めてくれるのです。
Julia: 身体もこれと同じです。寒い時には、体温を維持するために皮膚への血流を減らします。そして身体が冷えすぎて熱を生み出す必要が出てくると、身体は震え始めます。暑くなると、体は血液を表皮に流して熱を逃そうとし、さらに発汗機能によって体温をさらに下げようとします。
バリーの言い方をすれば、深部体温を安定させるための方法が、「ちょうど良い」状態を生み出す科学だといえます。しかし、アスリートにとって、ゴールテープを切ったり、デッドリフトをこなしたり、あるいは快適に街中を動き回ることが目標ならば、どうしてこれが大事になるのでしょう?バリーは、研究室ではアスリートが求めるものをピンポイントで追及すると言います。
Barry: パフォーマンス、知覚、保護。アスリートは最高の能力を発揮したいと望みますし、気持ちよく運動したいと考え、同時に怪我や環境から身体を守りたいとも望みます。
Julia: バリーによれば、たとえばアスリートが凍える寒さの中にいてそれに身体が順応していない、つまり身体がその極端な環境に慣れていない状態では、ホメオスタシス、つまり「ちょうど良い」状況にはなかなかなりにくいと言います。
これが身体の発汗、血流や筋肉への栄養分の供給にも影響を与えます。さらには、深部体温や、筋肉の機能や動きにも影響を与えてしまいます。これらすべてが運動能力を大きく損なうことにつながります。だから適切なアパレルを着用することが、特に最高の能力の発揮が必要な時には大切なのです。
[4:25]
Victor Cruz: そう。あれは大学の時だったはず。確か、俺の記憶ではマイナス10度くらいだったはず、ただ、雨が降って風も強かったから、マイナス20度くらいにも感じたよ。
Julia: いまの声は、ニューヨークジャイアンツのワイドレシーバーとして活躍し、スーパーボール優勝の経験も持つ、ヴィクター・クルーズです。エリートアスリートの中も、アメリカンフットボール選手は過酷な気象条件でプレーすることも避けられません。それでも、ヴィクターによると、その日チームはちゃんと勝てたそうです。
Victor: そうさ。すごいランニングバックの選手がいたんだ。いつでもボールを待ち構えていた。「雨だって?いいじゃないか」というような選手だったよ。
Julia: ヴィクターは寒い日には身体をちょうど良い状態にするために、しっかりと重ね着をしていたと言います。
Victor: それでも、フットボールをやるのがほとんど不可能とも思える日だった。渦を巻くように風が吹いていた。重ね着をするのにもかなり時間をかけていたし、何枚、どれだけ着込むのが正しいか悩んだよ。
Julia: ヴィクターにとって、一枚余分に着るのか、一枚薄着をするのかは単に着るものだけの問題に止まらず、ボールをキャッチできるか落とすかに関わる問題なのです。
Victor: 大事なことは、フィールドに出た時に、着ているもののことを気にしなくて良い状態になること。たとえば試合中に、「寒すぎる、やっぱりもう一枚着ておけばよかった」なんて心配したくないからね。それでも俺たちはアスリートだから、そんな時にも戦いは続けるし、メンタルの力でそれは乗り越えるんだ。
Julia: ヴィクターの得意な「エンドゾーンダンス」の時は?それにちょうどいい温度は?
Victor: サルサに温度は関係ないよ。エンドゾーンにいて、サルサを踊っている状態では、いつでも熱くなっているに違いないからね。
[5:49]
Julia: アパレル、運動能力と体温調節がどんな風に働き合うか測定すること自体が科学ですね。そこをもっとわかるためにバリーの職場に向かいました。
オレゴン州ビーバートンのナイキ本社です。とても気持ちのいい夏の日です。悪天候での人間の身体の能力を試すためには最適な日とは言えませんが、そのテストをすることは可能です。
Barry: ナイキエクスプロアチーム・スポーツ研究所へようこそ。
Julia: バリーの声です。この研究所では、ナイキの研究者たちが新しいイノベーションを生み出すためのテストを行っています。ここにある先端的な技術を活用し、ナイキでは世界のエリート及び一般アスリートの手元に商品が届く前に、アパレルの試作品を様々な環境でテストすることができるのです。
Barry: ここには2つの最新の環境試験室があり、ここでは気温、湿度、相対的な風のスピードや放射熱の精密な調整もできます。そのため、たとえばリオデジャネイロの灼熱の日差しもここで正確に再現することができます。また、その真逆にあるような場所、アメリカのウィスコンシン州のグリーンベイで、12月にアメリカンフットボールをする環境を考えると、凍りつくような気温で、寒く、肌を刺すような風も吹くことでしょう。そんな環境もこの研究室で再現できます。
Julia: バリーを始め研究者たちが特に関心を持っていることは、肌の温度や発汗、そしてそれが体温調節にどんな役割を果たすかということです。先ほど述べた通り、汗は身体が「ちょうど良い」状態を保つために大きな役割を果たします。深部体温が上がると、身体から水分が出て行き、蒸発し、気化熱を奪っていきます。しかしそれは身体の仕組みのほんの一部です。
Barry: 汗をかくだけで身体をクールには保てません。汗は蒸発して初めて身体を冷ますのです。
Julia: 理想的なアパレルは、身体が冷えた時には皮膚の熱を蓄え、身体が熱くなってきた時には汗を逃すことができるものです。ここで、ナイキとしては、どのくらいの早さでアパレルが汗を逃して蒸発させているのか、また同時にアスリートの体温がどのくらい蓄えられているのかは、どうやってわかるのだろうという疑問が湧いてきます。
Barry: そのためにロボットがいるのです。ハルと言います。
Julia: そうですよね。体温調整に関する理解を、ハルというスポーツするロボットに任せていいのかと心配ですよね?
Barry: ある意味、ハルはとてもストイックです。彼は強くて、言葉少なに、しっかりと仕事をこなしてくれます。歩くことも、汗をかくこともできる、体温のある人体模型です。
Julia: 2つのことを測定してくれるのですよね。
Barry: その一つはアパレルの熱抵抗。つまり保温性のことで、アパレルが皮膚の周りにどの程度熱を蓄えられるかということです。もう一つ、ハルを使って測定していることは、蒸発耐性です。つまり、アパレルがどの程度汗の蒸発を可能にしているかということです。
Julia: ハルとの実験から、ナイキの科学者のチームは私たち人間に関する情報を手に入れ、これまでに可能とは思えなかったアパレルイノベーションの開発を進めていくのですね。
[8:36]
研究者、アスリート、そして汗をかくロボットの話も聞きました。それぞれ、最高レベルのアスリートの要求にかなうアパレルを作るために重要な役割を果たしています。しかし、最新のデザインやイノベーションは、私たちの身体の体温調節機能をどのようにして支えてくれているのでしょう? ここで、研究室で得た知識を元に仕事を進めるグループの方に会いましょう。
Brian Stewart: 彼らは私たちにとって、本当に重要なパートナーです。
Julia: 彼は、ブライアン・ステュワートです。ナイキエクスプロアチーム・アパレルイノベーション担当の副社長です。彼に、チームが手がけるイノベーションの開発作業について聞きましょう。
Brian: 全てはアスリートへのフォーカスが基本にありますが、どのようにアスリートが動き、身体を使いこなすのかを理解するために必要な人材が研究所に揃っているのです。
Julia: そしてアスリートが何を求めるのか。アスリート、研究者、アパレルの開発者全てが揃い、力や知識を合わせることによって素晴らしいものが形になって生まれるのです。ナイキサーマスフィアマックスやエアロロフトなどのアパレルイノベーションもこのような過程から生まれました。サーマスフィアマックスも、エアロロフトも、保温や通気など、空気をアスリートの味方に使う機能です。
サーマスフィアマックスは軽量で断熱性のある複合素材です。素材の裏側に盛り上がる節状の構造が暖かい空気を身体の近くにとどめ、屋外でのトレーニングでもアスリートの身体を暖かく保ちます。エアロロフトは、ダウンという古い素材を使った新しいイノベーションです。超軽量なベストにダウンを用いることで、アスリートは素材のかさばりを感じることなく暖かく過ごせます。しかし、体温が上がった時には、そのダウンの帯状の層の間にある調整板のような部分がもう一つの役割、つまり通気孔としての役目を果たすのです。軽量なエアロロフトは、ランニングにもあるいは街を歩き回るなど日常的な活動にも理想的です。
Brian: 運動で体温が上がって出てきた汗をすぐに逃すことができます。だから暖かさはそのままでも、保温性のある服の中に汗や湿気がこもらないのです。
Julia: ある意味、チームは未来のアパレルを作ろうとしているのですね。例えば、体温に適応するアパレルが作れたらどうでしょう?
Brian: それは新しい発想です。というのも、アパレル業界は常に重ね着を基本に考えていましたから。それ自体は悪くないのですが、限界もあります。例えば、最初に作られた車を想像してください。車の中でも寒い時には膝に毛布をかけることが必要でした。それが今ではどうでしょう。車のサーモスタットを調整すれば、常に快適でいられるのです。一方、正直なところアパレルは未だに膝に毛布をかけるような状態だといえるでしょう。寒かったら一枚重ねて、暑くなると一枚脱ぐと。自分の変化で、例えば走っている時やあるいはお天気が変わって暑さを感じた時に、自分で調整をしなくても済むように、勝手に対応してくれるアパレルはどうしたら作れるんでしょう?
[11:13]
Julia: 必要な時に身体に対応してくれる服。新しい考え方です。その一歩が、ナイキのエアロリアクトですね。研究から生まれ、アスリートの視点や美しいアパレルのデザインを活かしたエアロリアクトは、芸術、科学とパフォーマンスの境界を超えるような新しい素材技術です。
Peter Harrison: 汗が出はじめた時、ガーメントがどうなってほしいと思いますか?変化に対応するガーメントがその本領をもっとも発揮できるのは、身体が自然のままの機能を発揮することを助けられる時だと思っています。
Julia: 今の声は、ナイキエクスプロアチーム・アパレルイノベーション部門でエアロリアクトのプロジェクトディレクターを務めたピーター・ハリソンです。
Peter: 人間の身体を冷やすことが必要になります。例えば、走っている時には、瞑想をしているように感じることがあるといいます。その状態を維持したいと。
そんな時には、「ちょっと待て。暑すぎてとても快適とは言えない」などと考えたくありません。つまり、ガーメントが体温変化に対応することで、アスリートはスポーツに集中することができるのです。
Julia: エアロリアクトには素晴らしいテクノロジーが生かされているのですね。理想に一歩近づきました。
Peter: 2つの成分からなる、機能性のある糸を使っているので、2つの性質があるのです。それが汗や、蒸気に異なる反応を示すのです。ここで蒸気がとても大事な意味を持つのですが、蒸気とは、身体が汗を出す直前に身体から出始めます。だから、蒸気が糸の反応を促す仕組みにしています。糸のうちの1つはゆるもうとし、もう一つは同じ状態を保とうとします。それにより素材の通気性が高まるのです。
Julia: その通気性によって、汗や水分が体表面にとどまらないようになり、アスリートはワークアウトの始めから終わりまで、乾いて快適な身体の状態を保てるのですね。しかし、エアロリアクトが機能するかどうか、チームではしっかり確認しています。その技術を生むきっかけとなったランナーに確かめてもらっているのです。
Peter: アスリートに、それがどんなものかを伝えずにプロダクトを送付するのですが、それが楽しみなのです。同時にたくさんの質問に答えてもらいます。アスリートには何度も試作品を着てもらわなくてはいけません。時には、どんな状態でそれを着て走ってもらいたいか伝えることもありますが、それ以外にほとんど何も言わずに着てもらいます。そして回答が戻ってくる時に、彼らには伝えていなかったのに、プロダクトの特徴にしっかりと気づいてもらえていることを確認するのが嬉しいです。
Julia: エアロリアクトに関して、よく聞こえてきた答えは?ランナーは走っている間ずっと快適で、身体が乾いた状態だったと感じたということですね。
[13:21]
ナイキの環境に適応するアパレルが、素材科学の世界に変化をもたらし始めるなか、アスリートも、先ほど述べたゴルディロックの「ちょうど良い」瞬間に気づくようになるかもしれません。あるいは将来、アスリートは寒くないか、汗をかき過ぎていないか、あるいはもう一枚重ね着しなくて良いかという心配もしなくて済むようになるかもしれません。ヴィクター・クルーズのような選手たちにとっては、「ちょうど良い」という状態を感じることによって、もっとも大切なスポーツや勝利にもっと気持ちを集中できることになるでしょう。
Brian: 着ているもののことを考えなくても良いといえることは、アスリートにとってはプラスとなります。さらに、それが彼らにとって最高のソリューションで、彼らにちょうど良く、そして気に入ってもらえるものであり、着ることが自信につながるとしたら、それは最高でしょう。
Julia: 体温調節の究極の理想は、暑すぎず、寒すぎず、ちょうど良い状態です。ハルも賛成するはずです。
Narrator: 「The Science of Just Right」はナイキニュースの提供でお送りしました。体温調節についての詳細な情報は、NEWS.NIKE.COM からご覧ください。
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