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2016年7月12日

飛躍のきざし
ルノー・ラビレニ

ラビレニの、他を寄せ付けない棒高跳びの技術の素晴らしさは、彼を世界一の選手にし、歴史的に見ても最高の選手と言えるかもしれません。そしてラビレニは、笑顔でそう呼ばれることを受け入れます。

ルノー・ラビレニの頬は、少しも余分な肉が付いておらず男性らしく、くぼんでいるように見えます。跳躍の前には、まるで息を吸い込むことで体が軽くなるかのように、もしくは、空気を吸い込むと高く飛べるかのように、ゆっくりとその頬に空気を入れて膨らませます。そしてポールの端を両手で持って高く掲げ、かかとで勢いをつけて走り出します。

走ることで彼は飛べるのです。助走の最後5m、ラビレニは全力で走り、エネルギーを高めます。2014年に世界記録を樹立した時、そのスピードはロードランナーのトップスピードに近い時速19マイル(約30km/h)にもなっていました。ただもちろん、早く走るだけでは足りません。ラビレニが早いとはいえ、他の選手も同じように早いのです。棒高跳び選手は、ポールを完璧なタイミングでボックスに落とし、ストレスをかけずに操作しなくてはいけません。そのためには自分の歩幅も理解し、ポールがボックスに入って、その動きを突然止める瞬間に、最後の一歩が自分の上側の手の真下に着地しなければなりません。内側に入りすぎると、腕が引っ張られてしまい、外すぎるとポールの方にジャンプしなければいけません。しかしラビレニは自分の足を置く場所を正確にわかっているのです。

29歳のフランス人選手、ラビレニは、世界で一番であり、史上で一番です。2014年に6m16cmを飛び、それまで21年守られ続けた世界記録を破りました。身長176cmは、他の選手と比べてもかなり小柄ですが、それを補うスピード、一貫性と技術を持っています。アメリカ陸上代表チームの顧問も務めるニューヨーク州立大学コートランド校でキネシオロジーの教授を務めるピーター・マギニス氏は、彼の跳躍を分析し、大変興味深いことを発見しました。ほとんどの棒高跳び選手の飛び出す時の角度が18度であるのに対し、ラビレニは、もっと浅い角度で飛び出しているのです。そして、彼は他の選手よりも速い速度で地面を離れているのです。最後の2ステップの割合は均等で、ほぼまっすぐに進んで飛び上がっていきます。さらにラビレニはより長い時間ポールの後ろに体を保っています。「これは、彼が地面を離れる時に、他の選手よりも多くの運動エネルギーを蓄え、それをうまく使っているということを意味します。」とマギニス教授は説明します。

棒高跳びに使うポールは、グラスファイバーか、あるいはグラスファイバーとカーボン繊維を合成した物からつくられたシンプルな筒です。ラビレニはグラスファイバー製のポールを使っていますが、ポールがしなり、一番大きなストレスのかかる中央の部分は少しだけ太くなっています。選手の使うポールは長くて硬い物です。しかし、ラビレニは、小柄にもかかわらず、跳躍の時には他の選手よりもポールを多くしならせます。ポールが着地すると、彼は下側の手でポールに力をかけます。そして体を空中に持ち上げると、上側の手で体をスイングさせます。その時にポールがバネのようにしなるのです。

ポールがまっすぐな状態に戻ろうとする時、ラビレニの体はポールの力で高く引き上げられます。そして自らの体を逆立ちするかのように逆さまにします。足がバーを超えたほんの数ミリ秒の後、彼は体をしならせていきます。胴体がバーを越える時でも、彼の体の多くの部分はバーの下に残っています。つまり、彼のテクニックがあれば、自分の体をバーの近くまで持っていくと、必ずしもバーの上になくても飛び越えられるようになる、ということです。(走高跳びの選手も同じようなテクニックを使っています。)ポールを手から離すと、腰をツイストしてバーの位置を確認し、まもなく足を広げてその回転を止め、体を安定させます。

体の重心がポールを超えた瞬間、彼は体の回転を止め、体はバーにそって動いていきます。地上6mを超える場所で彼はその最高のパフォーマンスを見せます。体がバーに触れないようにその動きをコントロールしながら、バーを超えていきます。

その後、彼の体は空中からピットへと落ちていきます。6mという高さがあれば、着地するまでに握りこぶしをつき上げる余裕さえあります。そしてラビレニは、競技の最後をいつも同じ笑顔で締めくくります。

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