2016年7月15日
アシュトン・イートンのエコシステム
1912年以来、10種競技の勝者には「世界でもっとも偉大なアスリート」の称号が与えられています。その称号を決めるのは、各競技の(複雑な採点方法に基づく)得点の合計です。2015年の北京の世界選手権で、アシュトン・イートンは世界記録の9045点でこの名誉ある称号を手にしました。1日15時間にわたる競技が2日間続けられる中、イートンが実際に試合で戦っていたのは、この30時間のうちたった10分ほどでした。つまり、実際の試合よりも、競技していない時間が大切だということです。イートンのコーチのハリー・マラによると、「10秒走って、5秒飛んで、砲丸を投げるだけの競技ではないのです。」
マラは、その言葉を証明するものとして、各競技の繊細な内容、そして、2日にわたる試合の最後には、コーチ自身もイートンと同じくらいに疲れていることを教えてくれました。彼が最高の競技を行うためのエクイップメントには、ナイキが開発した特製のクーリング(冷却)フードも含まれます。この夏、ナイキは、選手からの意見やデザイナーの観察結果、この競技の独自の要件に基づいて、チャンピオンのためのイノベーションを特別に用意しています。
自己記録をさらに更新しようとするイートンを支える秘密を下記に紹介します。
戦略
- 競技1日目と2日目の間の睡眠時間は、最大でも5時間しかとれないため、前日に10~12時間の睡眠をとって寝だめする。
- 朝起きたらすぐに動き出せるように、イートンは夜寝る前にギア(シューズ、スエット、ユニフォーム、ビブス)を揃える。
- 競技の場所がそれぞれ異なるため、朝5時からの試合前に行うウォームアップはどこでもできるようにする。2012年のロンドン大会では、ロンドンの街中でウォームアップをした。2015年の北京ではホテルで、最近ニューヨークで行われた大会のウォームアップはダンススタジオで行った。
- 通常10種競技の選手は、競技の合間の時間、スタジアムの中の休憩エリアでくつろいだり、ビュッフェで食べたり、コーチと打ち合わせをしたりするが、イートンの場合は、横になって次の試合を頭に思い描く。
- 可能な限り、競技の間に冷たいシャワーを浴びて体温を下げてリフレッシュする。
- フィールドでの暑さ対策として、イートンはナイキのクーリングフードをかぶる。
- イートンは3~4分間のうちに眠りにつき、15分後に目をさますという、自分をフレッシュに保つための特技を身につけた。
- 集中力を維持するために、イートンはマラから学んだ競技のコツを小さい紙に書いてシューズの中に入れておき、試合の前に見直す。
- イートンは1回目の投てきやジャンプで良い結果が出せた場合(10種競技では3回の試行が可能で、そのうち最高の得点だけが記録となります)、体力を保持するためにマラの指示で残りの2回をスキップする。
- イートンとマラは、各競技を1つずつ明確に切り分けて取り組むことにしている。ウォームアップを競技の始まりとし、競技が終わると、すぐに気持ちを切り替える。この方法によってそれまでの試合内容が(良くても悪くても)次の競技に響くことを防ぐ。
燃料
試合前と試合中、イートンは食べたいものを食べることにしています。よく登場する10個のメニューを紹介します。
- トースト
- コーヒー
- エナジーバー
- スポーツドリンク
- スイカと塩
- 七面鳥のサンドウィッチ
- ヨーグルト、グラノーラとナッツ
- オレンジジュース
- ステーキ
- 水
コーチ
マラコーチは、競技1日目の朝5時にイートンとホテルで会ってから、2日目の23時以降のメディアゾーンでのインタビューが終わるまで、常にイートンのそばにいます。試合中に行うマラコーチの仕事のうち、10個を紹介します。
- メジャー、チョーク、接着テープやホイッスルなど、コーチングキットを使いながらウォームアップ効果を最大限高める。
- 最高の場所で競技が見られるように、コーチングボックスの自分の立つ場所を確認する。
- 各競技でイートンのフォームの詳細を確認し、注意する。
- アスリートの状況を予測したり、結果に基づいて、1種目あたり2つから4つの注意点をイートンに確認する。
- 風向きを確認し、イートンのパフォーマンスに影響する可能性のある場合は伝える。
- イートンの水分摂取を管理する。
- (練習結果に基づいて)高跳びの最初の高さを決定する。
- イートンが棒高跳び用に正しいポールを選んで、適切な位置についているかを確認する。
- 最終種目までのイートンの疲労度によって、1500m走のそれぞれのラップをどの程度で走るか決定する。
- 優勝した場合はすぐにメディアゾーンに向かわなくてはいけないため、スパイクを履き替える場所やエネルギーバーが必要かなど、試合後すぐにイートンが必要とするものを前もって準備しておく。
エクイップメント
10種競技は、心身を削る戦いです。。スピードと力だけではなく、テクニックもなければ10種選手として成功することはありません。そのため、彼のエクイップメントは、スポーツのニーズと同時にアスリートのためのニーズも満たしていなくてはなりません。そして当然、円盤、やり、砲丸などの器材も必要です。
- バッグ:きちんと整理されていれば、時間もエネルギーも節約できます。10種競技の中では、エネルギーは最高の競技のために、時間は最大の集中のために欠かせません。ナイキの部門を超えたNXTチームによってデザインされたイートン用のローラーバッグにはたくさんの収納ポケットが付いており、シューズ(試合用に8足)、テープ、ノート、ビブス、予備のソックスなどがきちんとしまえるようになっています。
- トラックスパイク:イートンは、100m、110mハードル、そして1日目最後の400mには、ナイキ ズーム スーパーフライ エリートを着用します。2日目の10種最終種目となる1500mには、ナイキ ズーム ヴィクトリー 3を着用します。
- 跳躍用スパイク:走り幅跳びにはナイキ ズーム LJ 4を、走高跳びにはナイキ ハイ ジャンプ エリート、棒高跳びにはナイキ ズーム トリプル ジャンプ エリートを着用します。
- 投てき用シューズ:投てきの3種目にはそれぞれ異なるシューズを着用します。ナイキ ズーム ジャベリン エリートとナイキ ズーム SD4の2足は、それぞれの種目(やり投げ、円盤)向けに作られたものですが、3足目となる砲丸投げ用に使う(ランニングシューズの)ナイキ エア ズーム オデッセイはイートン独自のチョイスです。
- 円盤は直径22cmで、重さは2kgあります。
- 砲丸は7260gの重さです。
- 砲丸用スリーブ:これはイートンのためにナイキが作ったもので、前腕部に圧をかけて手首の反射の動きを支えると同時に、従来のテープに変わってサポートも行います。ストラップが付いていることで、投てきの最中にも締め付けを調整でき、選手の安心感を高めます。
- イートンの槍は2.6~2.7mで、重さは800gです。
- 飲み物を入れたり、特注のクーリングフードを冷やすためのクーラーもあります。
- クーリング フード:跳躍や投てき競技の間、イートンは何時間も継続してフィールドで過ごすことがあります。頭から水をかけるような気持ち良さを感じたいという希望からつくられた、特注のクーリング フード。イートンの頭の表皮体温を一時的に抑えると同時に、付属の色つきのレンズが印象的なシルエットを生み出します。
数字
10種競技の世界記録に加え、イートンは10種競技における走り幅跳びと、400mの世界記録も保持しています。各種目の自己ベストが、将来のゴールへの足がかりとなります。
- 100m: 10.21秒(2012年6月22日、オレゴン州ユージーン)
- 走り幅跳び: 8.23m(2012年6月22日、オレゴン州ユージーン)
- 砲丸投げ: 15.40m (2013年3月30日、カリフォルニア州パロアルト)
- 走高跳び: 2.11m(2012年6月10日、カナダ バンクーバー)
- 400m: 45,00秒(2015年8月28日、中国北京)
- 110mハードル: 13.35秒(2011年6月4日、オレゴン州ユージーン)
- 円盤投: 47.36m(2011年8月14日、カリフォルニア州チュラビスタ)
- 棒高跳び: 5.40m(2015年8月8日、オレゴン州ユージーン)
- やり投げ: 66.53m(2013年3月16日、カリフォルニア州サンルイスオビスポ)
- 1500m: 4分14,48秒(2012年6月23日、オレゴン州ユージーン)
トータルスコア:9045点(2015年8月29日、中国北京)
アシュトンのようにトレーニングにするにはNIKE.COM/NTCを、他のナイキアスリートのストーリーはNIKE.COM/ATHLETESをご覧ください。
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