2016年10月4日
ナイキは、プレイヤーやファンにもわかりやすい、印象的なスタイル、素材やカラーのスパイクをフットボールピッチで披露することで長く知られていますが、スパイクのアウトソールにも大きな変化を生みだしています。「ナイキ フットボールでは、これまでの2年間でその前の20年よりもトラクションを進化させています。」とナイキ フットボール フットウエア担当副社長のマックス・ブラウは述べます。「3Dプリントでテストサンプルの制作時間が短縮し、自然科学や有限要素解析(FEA)の活用によって、仮定や推測が入り込む余地も無くなりました。私たちが設計したトラクションパターンもその機能が証明されたものなのです。」
マーキュリアルのスピードに特化したトラクション
フットボールスパイクにとってトラクションが最も重要と思われる一方、目を閉じた状態でスパイクを着用して、スタッドの配置を言い当てられるプレイヤーはほとんどいません。それでもナイキのエンジニアたちは細部にまでこだわり、思いつく限りの形状や配置を長時間をかけて試し、さまざまプレイスタイル、サーフェイス、いろいろな条件に適切なトラクションパターンを開発してきました。
その成果が最新のマーキュリアル スーパーフライやマジスタ2にも表現されています。マーキュリアル スーパーフライは、スピード重視のプレイヤーのためのものですが、前足の角度をつけたスタッドは推進力を高めるため、かかとのV字型スタッドは減速の時に大きな役割を果たします。(というのも、必要に応じ減速ができるという自信があるからこそ、プレイヤーはフルスピードを発揮できるようになるからです)。
マジスタ2は、回転の動きにしっかりとトラクションの効果を発揮することが重要とされ、そのために親指周りのV字のスタッドを、サイドの半円錐形のスタッドと組み合わせて使っています。
それぞれのスパイクは先行モデルとは全く異なる、新しいトラクションを特徴としており、他のフットウエア サイロにも、トラクションの進化と合わせて随時新しいものを取り入れていきます。「ナイキ フットボールは進化しており、今やすべてのスタッドとその配置にはそれぞれはっきりした目的があります。」とブラウは説明します。「一つ一つのスタッドが芝に食い込む深さも調べ、適切なトラクションを採用しています。」
マジスタの回転するトラクション
しかし、フットボールは芝の上のみで行われているものではないため、ナイキのトラクションの専門家は、芝のピッチ以外にも目を向けています。近年、人工芝のピッチも増加し、これに伴い異なる課題も生まれます。「人工芝の場合、その人工芝の素材に小さなゴムの小片も混ざっており、それらがプレートをどのように捉えるかを考え、さらに、ゴムと芝では温度変化も異なることも考えなくてはいけません。」とブラウは述べます。
これらの問題に対応するため、ナイキは全く新しい人工芝用(AG)スパイクも展開しています。AG プレートのトラクションは従来のFG スパイクよりも短く、空洞になっています。これにより反発性が高くなり、スパイクが人工芝に深く食い込むのを防ぎます。Texon®素材のシールドをスパイクの内側に仕込み、高い気温の中、人工芝でプレーするプレイヤーの足に熱が伝わりにくくします。さらに耐久性を高め、人工芝でのプレーによるシューズへの影響を考慮しています。
人工芝用(AG)トラクション
一般的に硬くスムーズなサーフェイスで行われることの多い、少人数制フットボール向けのトラクションも新しくなりました。早い動きができるサーフェイスでは、足元でのボールのコントロールが重要なため、その機能がトラクションにも求められます。「2015年に少人数制ゲームのためのNikeFootballXを展開した時、すべてのシューズに全く同じトラクションパターンを用いていましたが、今ではすべてのナイキフットボール プロダクトにトラクションの科学を用いて、こだわりを持って開発を進めています。」とブラウは説明します。例えば、最新のマーキュリアルXのアウトソールには3つの突起を持つ星のような形状を用いて、屈曲溝も配している一方、最近発売したマジスタXは曲線でヘリンボーンを描くようなアウトソールになっています。それぞれ同じ名前のスパイクと、同じようなプレースタイルのプレイヤー向けの機能を提供し、さらに硬めのサーフェイスでのプレーに合わせてクッション性も高めています。
マーキュリアルIXとマジスタXのトラクション
多くのサーフェイスや試合環境に対応する必要がある一方、ピッチが最悪の状態を考えることから画期的なアイディアも生まれました。濡れて泥だらけのピッチでは、滑ったり、動きが鈍ったり、プレートに泥がついてスパイクが重くなっていました。このような状況ではプレイヤーの動きが遅くなり、足元の動きを生かせない状態になります。そこでナイキは長い年月をかけて、泥がソールプレートにこびりつくのを防ぐ特許技術、アンティ・クロッグ・トラクション テクノロジーを開発しました。「アンティ・クロッグ・トラクションは画期的なテクノロジーです。これを履かないプレイヤーは、試合で不利になる程の違いを生み出します。」とブラウは述べます。
ナイキが特許を取得したアンティクロッグ トラクション
ナイキでの、トラクションの研究開発は、今も進んでおり、そのプロジェクトの情熱や進化のスピードに衰えはみえません。プレイヤーが履くスパイクの一番下にある大事な部分で、プレイヤーをがっかりさせないように、ナイキのエンジニア、デザイナー、科学者たちはこれからもありとあらゆる素材やその組み合わせを試し続けていきます。
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