2017年6月14日
2012年5月にアーティストであるトム・サックスとナイキは、ナイキクラフト マーズヤードシューズを発表しました。これは、NASAの高い専門性を持った科学者と、トム・サックスの交流からインスピレーションを得て、ニューヨーク市のパークアベニューアーモリーで行われた、”SPACE PROGRAM 2.0 : Mars エキシビジョン”向けのハイパフォーマンス エクイプメントとして作られたものでした。それから5年が経ち、サックスがオリジナルシューズを長期にわたって使用し、素材などを改良したナイキクラフト マーズヤードシューズを、2.0として発表します。
サックスは次のように話しています。「オリジナルシューズは、摩耗試験、強度試験、折りたたみ試験など、すべての試験に合格していました。それでも実際に使い始めると、期待通りではない点がありました。新しい素材を使ったので、もっと良い結果を期待していたのですが、実際に履いてみないとわからないことがあります。」オリジナルシューズで使用したヴェクトランは、一般的なポリエステルよりも強くて軽い素材ですが、使用しすぎるともろくなることがわかりました。
サックスは5年間、ナイキのデザイナーと協力しながらシューズのテストを行ない、日常的に使用することでいくつか改良点を見つけ出しました。その結果、“人間の可能性を広げるための努力を続け、何事にも終わりはない(there is no finish line)“という、サックスとナイキに共通するデザイン理念が反映されたナイキクラフト マーズヤード 2.0シューズが完成しました。
オリジナルシューズのナイキクラフト マーズヤードを5年余り履き続けてきたサックスは、ナイキのデザイナー達と改良点である耐久性の向上などに取り組んできました。ナイキクラフト マーズヤード 2.0のアッパー素材には、オリジナルシューズに使用したヴェクトランの代わりにトリコットメッシュ素材を使用しました。これは、より通気性の高い素材で、シューズ内に熱がこもるのを抑えるという特徴があります。シューズを履きやすくする赤いストラップの縫い付けには、四角の中にX字の縫い目を加えたより強固なステッチを採用しています。アウトソールは、元々は砂漠のような火星の表面を歩くために突起したSFBのパターンを用いていましたが、都会での着用に適するように凹凸を反転させました。そして、マーズヤード 2.0には、メッシュと、裸足での着用に最適なコルクの2種類の中敷が付いています。
こうしたお互いの継続的な努力の結果、マーズヤード 2.0が生まれましたが、トム・サックスの作品にはよくあることです。
左側 / メッシュの中敷には、紐を結ぶツールのイラストが描かれています。
右側 / コルクの中敷には、宇宙の要素を表現したイラストが描かれています。
トム・サックスが作り出すものは、完成することがありません。この哲学的な考え方は、彼の作品に表現されています。作品に使われているネジ、縫い目、つなぎ目、ジョイント、釘や針はむき出しになっています。これらは、視覚的要素に限らず、一つの作品がどのように存在しているのか、という背景を伝えることを含め、自分の仕事を見せることへのこだわりを表現しています。(サックスは現代的なアイコンを新しい形で表現する彫刻家として有名になりましたが、現在では幅広い表現活動を行なっています。)
トム・サックスが日常的に使われる素材に関心を持っていることは、ナイキクラフト マーズヤード 2.0と、オリジナルプロダクトからもうかがえます。使用されている素材の多くは、染料を使わず本来のまま用いられ、赤のプルタブやスウッシュにサックスらしさが表現されています。
サックスは次のように述べます。「私はいつも、不完全なものをそのまま受け入れます。たとえば、ポリウレタンのミッドソールはすり減り、シュータンから小さなカスが落ちることもありますが、それはまるで犯罪捜査で集められるパンくずのように、そのシューズで何かを経験したことの証です。人は、自分の傷跡を誇りにします。だから、私はあえて素材を磨きあげないのです。そこに物語があるので、汚くなるまでシューズを履いて、『これが私の履いたシューズです。私の生きた証、これまでに私が経験してきた証拠です』と語って欲しいのです。」
製品に込められたコンセプトを生かし、ナイキクラフト マーズヤード 2.0の発売と同時に、サックスが普段スタジオで行っている習慣を元にした、ユニークな体験ができる、ナイキとトム・サックスのスペースキャンプも発表します。
ナイキクラフト マーズヤード 2.0のアウトソールパターンは、都会向けにオリジナルシューズの凹凸を反転させています。
トム・サックスのスタジオでの1日は、濃いめのコーヒーと一連のドリルから始まります。ドリルには、腕立て伏せやデッドリフトなど、本格的に肉体を使う柔軟体操や筋トレがある一方、紐を結んだり、まっすぐな線を描いたりするなどの手先の器用さに挑戦するものがあります。これらのドリルは、スタジオの全員が雑念を払い、心と体を目の前の仕事に集中させるのに役立ちます。ここで言う彼らの仕事とは彫刻づくりです。
「この習慣を始めたのは、スタジオの何名かが年齢を重ねるにつれて、私と同じように体のあちこちが痛んできたことに気づいたことがきっかけでした。これから自分の仕事に人生をかける若い男女が、腰を痛めたりしないように守ってあげたいと思ったからです。」とサックスは話します。
そこで、サックスは2005年にパット・マノッキアの提唱する5つの重要な運動(デッドリフト、ランジ、懸垂、腕立て伏せ、腹筋運動)を始めました。サックスは続けて話します。「スペースキャンプは体を強くします。強い体が、難しい決断もできる強いマインドを支えるのです。これを週に3日やっています。」
ナイキとトム・サックスのスペースキャンプは、このスタジオで行われる心理的及び肉体的なドリルのいくつかの要素を、障害物コースという形に表現したものです。精神や肉体、人間性を試すこの体験は、日々の生活にも無理なく取り入れられる習慣を作ります。
この障害物コースの通過には1時間かかり、あらゆるレベルの人向けに作られています。このコースをやり遂げた人は、ナイキクラフト マーズヤード 2.0を先行して購入することができます。
1つ目のスペースキャンプは6月8日からニューヨークで実施され、その後6月中にロンドンでも行われます。詳細はNIKECRAFT.COMをご覧ください。
トム・サックスとナイキの関係は、サックスの好奇心を掻き立て、彼は次のように話しています。「どんなプロジェクトでも、学びの機会になります。」サックスとナイキが初めてプロジェクトを共にしたのは、2009年の癌撲滅のための展示会「STAGES」でした。その5年後、ナイキとサックスは、彼のユニークな視点から宇宙旅行に求められる精神と、肉体的要素をテーマとした展示会「Space Camp 2.0: Mars」でコラボレーションを行いました。このプロジェクトは、マーズヤード シューズなどの、いくつかの革新的なナイキ製品を生み出すと共に、プロジェクトを継続的に進化させ、新たにアイディアを生み出す基盤になりました。
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