2017年10月26日
ヴァージル・アブロー氏
OFF-WHITEのクリエイティブディレクターであるヴァージル・アブローは、2016年10月に新たなコラボ企画のためにナイキ本社を訪れましたが、ナイキとの関係は、このずっと前から始まっていました。アブローがイリノイ州ロックフォードに住んでいた10代の頃、アブローと友人はシューズのアイディアを描き、それをナイキに送っていました。現在37歳となり、ミラノとシカゴに拠点を構えるアブローは次のように話します。「私はエア ジョーダンに魅了されていました。マイケル ジョーダンは伝説的で、私にとってスーパーマンでした。自分のデザインの土台や信念は全て90年代に形成されたものです。」
アブローは若い頃に、美しいシューズやヒップホップ、ロックアルバムのカバーやグラフィティからデザインを学んだことを、学校で学んだ建築学と工学に融合させています。クリエイティブ ディレクター、DJ、デザイナーそしてOFF-WHITEの創設者として活躍するアブローは、制作過程のさまざまな線引きを曖昧にし、ファッションとデザインの固定概念を壊し、ユーモアやDIY(Do It Yourself)の要素を作品に取り入れています。
「ナイキ本社があるビーバートンにいく前から、すぐに制作に取り掛かりたいと思っていました。ナイキとミーティングをするために何年も待っていたわけではないのですから。」とアブローは話します。アブローは初訪問の際にも、トリプルブラックのエア フォース 1 ローに、カッターナイフを使って切れ目を入れ、マーカーでデザインを描きました。それが、12月のデザイン マイアミで家具を発表する際にOFF-WHITEのスタッフが履くシューズ制作の始まりでした。
このデザインをもとに、1982年に最初のナイキ エア フォース 1をデザインしたブルース・キルゴアの息子であるマット・キルゴアにより、12足の手作りのエア フォース 1がナイキのブルーリボン スタジオで作られました。アブローはシュータン内部のフォームをむき出しにし、銀のスウッシュに太く目立つ縫い目をあしらい、オレゴン州ビーバートンでこのシューズが誕生したことを記す文字を入れたいと希望しました。
このようなデザインの再構築の作業と、アブローの長年の夢を叶えたいという思いが重なったことで、ナイキのアイコニックなフットウェア10点を共同で制作するプロジェクト、THE TENが始まりました。
「このプロジェクトは、スニーカーやデザインカルチャーよりも規模の大きな話で、まさに、最先端のデザインに他なりません。これら10足は機能とスタイルの概念を壊すシューズであり、私にとってはダビデ像やモナ・リザと同じようなものです。この意見に賛否両論あるとは思いますが、重要なのはこのシューズが他のシューズとは違う存在であるということです。」とアブローは話します。
10足のシューズは2つのテーマに分かれています。1つ目の「リビーリング(REVEALING)」は、手作業で切れ目を入れ、中身を見せ、再構築したわかりやすいデザインになっています。このテーマに沿って、エア ジョーダン 1、ナイキ エア マックス 90、ナイキ エア プレスト、ナイキ エア ヴェイパーマックス、ナイキ ブレーザーが作られています。
2つ目のテーマの「ゴースティング(GHOSTING)」は、半透明のアッパーを採用してリビーリングの考えをさらに前進させつつ、同じ素材を使って一連のシルエットに共通性を持たせています。このテーマには、ナイキ ズーム ヴェイパーフライ、ナイキ エア フォース 1 ロー、ナイキ リアクト ハイパーダンク 2017とナイキ エア マックス 97などが含まれます。
アブローの早い制作ペースは、考案から発売までの期間がナイキ史上で最も短いコラボレーションの1つとなりました。プロジェクトはエア ジョーダン 1、ナイキ エア マックス 90、ナイキ エア ヴェイパーマックス、ナイキ ブレーザーといったナイキのフットウェアアイコンの5足のイメージを、短い日程の中で再構成することから始まりました。「クリエイティブに関するほとんどの決断は3時間ほどで行われましたが、実際のデザインの改良に2、3日かかっています。ジョーダン 1は1度のデザインセッションで完成したのですが、夢を見ているような感覚でデザインしていました。デザインが浮かんで、すぐに完成しました。」とアブローは話します。
今回のコラボレーションでは、前述のエア フォース 1 ローをデザインした時のように、デザインの過程でカッターナイフが中心的な役割を担いました。アブローは一足一足のシュータン内部のフォームをむき出しにし、かつナイキのラベルの位置をずらし、スウッシュの位置の変更や拡大をし、シューズの様々な場所にオレンジのタブを使って色のアクセントを加えました。その作業の際にも、カッターナイフが活躍しました。
また、ナイキ エア ヴェイパーマックスやエア ジョーダン 1、エア プレストの外側にナイキ エアクッションを示す「AIR」の表記や、靴ひもに「SHOELACES」と表記するなど、遊び心をもって文字を配置することでも、このコレクションの「リビーリング(REVEALING/露出)」の要素を表現しています。
複雑なデザインに見えますが、アブローはシューズへの親しみを持たせるために、シューズの中身を開いてその中にあるイノベーションを露出するプロセスが非常に大切だと考えています。「人々が求めるデザインに仕上がっていますが、それこそ地元のお店へ行って自宅にある工具を使えば誰でもこのシューズを作れるのです。」とアブローは話します。
このアプローチ方法は、たゆまぬ努力を続けることで自らの潜在能力を開花させることができる、というJUST DO ITの精神を物語っています。「昔の私のように、片田舎でデザインに情熱を燃やしている子どもについてずっと考えています。その子にはデザインについて理解する道標が必要なのです。」とアブローは話します。
リビーリング(REVEALING)の1足でアブローが手がけたナイキ エア ヴェイパーマックスは、デザイン中はまだ発売前だったこともあり、その制作にさらにやる気を掻き立てられました。同様に、ナイキ ズーム ヴェイパーフライとナイキ リアクト ハイパーダンク 2017の2スタイルもデザイン当時は発売前で、その新しさと可能性がデザインの刺激となりました。Breaking 2のために作られたランニング シューズのナイキ ズーム ヴェイパーフライ エリートとバスケットボールのリアクト ハイパーダンク 2017に搭載された最新鋭のクッションニング イノベーションに刺激を受けたアブローは、リビール(REVEAL)を進化させ、半透明のアッパーを採用したゴースティング(GHOSTING)を制作します。ハイパーダンクに先行するバスケットボールのアイコンであるナイキ エア フォース 1 ロー、そしてヴェイパーフライ エリートに先行するランニングのアイコンであるナイキ エア マックス 90を含むこれら5足のシューズに、半分中身が透けて見えるシンプルな素材を共通して採用することで、94年間にもおよぶこれらシューズの歴史をつなげたかったのだとアブローは話します。
「私の高校時代はサッカー、スケボー、自転車三昧の日々でした。スポーツを通して、また、デザインに魅了されて学んだことは、アスリートとデザイナーには共通する特有のスタイルや視点があるということです。それは、超一流になりたいという想いを心の奥深くに秘めているということです。」とアブローは話します。
1972年創業のナイキが発売したフットウェアを、中身が見えるように再構築した THE TEN は、スポーツとスニーカーのカルチャーを形成してきたシューズが長年人気を博す理由を教えてくれます。これらのシューズは時間をかけてその真価を証明し、また“THE TEN”によってフットウェアに限らず全てのデザインに対する理解を促してくれます。
アブローは次のように話します。「一つの表現を通して、ナイキのデザインのシステムとマニュファクチャリングがまさに完璧であることを強調したかったのです。これらのシューズに更に手作りの感覚を強めたデザインを組み合わせることで、この10のアイコンの人間的な要素を強調して、感情的な繋がりを広めようとしています。」
THE TENコレクションは11月9日から随時、NIKELAB MA5、DSM GINZA、OFF-WHITE™ TOKYO、MITA SNEAKERS、Sports Lab by atmos、Undefeatedで発売します。
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