ナイキは約50年にわたり、最もシンプルでありながら本質的な要素である「空気」を活用し、アスリートのパフォーマンス向上に取り組んできました。そして、素材開発における新たな成果として、トレイルランニング向けに「ナイキ ラディカル エアフロー」を昨年、2025年に発表しました。ナイキ パフォーマンス アパレルの歴史を受け継ぎながら、ナイキの科学者、デザイナー、開発者たちは、ランナーの身体を取り囲む空気そのものを積極的に活用することで、いかに体温上昇を抑えられるかを探求しました。
トレイルランニングは、パフォーマンスアパレルの有効性を試すうえで、最も過酷なスポーツのひとつです。レースの条件は多様かつ極端で、標高差1キロメートルに及ぶ急登から、数日にわたって過酷な自然環境を駆け抜けるステージレースまで存在します。象徴的な例が、カリフォルニア州シエラネバダ山脈を舞台とする100マイル(160km)のレースです。気温が約38度を超える環境下で、総上昇距離18,000フィート(約5.5km)以上、下降距離23,000フィート(約7km)以上という激しいアップダウンを走破することになります。高温多湿はパフォーマンスを妨げるだけでなく、怪我や体調不良のリスクを高めます。
こうした極限状態に身を置くトレイルアスリートたちは、身体を冷やしてパフォーマンスを維持する独自の工夫を重ねてきました。冷たいタオルを首にかけたり、まるで裏庭のプールで涼む子どものようにレースの途中で川や湖に身を横たえたり、さらには、走りながら服を脱ぎ捨てることさえもあります。

過酷な環境下では、アスリートが求めるレベルで機能するアパレルが必要です。気温が上昇し、時間が積み重なり、地形が大地から水辺へと変化しても、その性能が揺らぐことは許されません。
そこで、ナイキのさまざまな分野の専門家からなるチームは、人体が本来持つ冷却メカニズムを最大限に引き出すウェアの開発を目指しました。
ナイキ アパレル イノベーション部門シニアディレクター、ジャハン・ベーバハニーは次のように話します。「汗の蒸発は、身体を冷やす上で非常に重要な役割を果たします。私たちは、皮膚に届く空気の流れそのものを速め、蒸発冷却をより効率的に促進できる素材に着目しました。この素材開発を実現できる人材、ツール、リソースが、私たちには揃っていたのです。」
空気の流れをアスリートのために最大限に活用する研究は、ナイキにとって初めてではありません。ペーサーの空力学的影響に関する徹底的な研究が、2017年と2019年のエリウド・キプチョゲによる歴史的マラソン記録への挑戦、そしてフェイス・キピエゴンの1マイル4分切りの挑戦を支えていました。アパレルにおいても、ナイキ スタンドオフやDri-FITなど、暑さの中で空気の流れを促進する素材を用いたプロダクトの改良を重ねてきました。ナイキの科学者、デザイナー、開発者たちは、アパレルこそがアスリートの限界を押し広げる存在になることを深く理解しています。トレイルアスリートたちが競い合う極限環境を深く理解しているからこそ、彼らは身体に向かう空気の流れを促すための新たなソリューションが必要だと考えました。
従来のメッシュや通気構造の仕組みを見直した結果、開発チームはウェア全体に工学的に設計した空気孔を配置することで、空気をとらえて加速させ、穴を通じて肌へと導けるのではないかと考えました。走行時の前進動作によって空気の流速は高まり、汗が蒸発する気化熱で体温低下を促すことができます。つまり、身体が本来備える蒸発冷却を、素材そのものに後押しさせるのです。
部門を超えて結成された開発チームは、空気孔を理想的な構造で配置でき、かつ、同時に快適性を最大限に引き出して不快感を最小限に抑えるような、通気性に優れた素材の開発に注力しました。チームは、流体力学におけるベルヌーイの定理からヒントを得ました。特にベンチュリ効果という、狭い筒に流体を流した時に、流速が加速するとともに圧力が低下する現象に着目しました。素材の選定からエンジニアードニット構造に至るまで、肌へと向かう空気の流れを加速させる上であらゆる要素が検討され、研究やテストが重ねられました。
そして完成した新素材は、親水性を備えた化学構造を持つエンジニアードニットで、湿度をコントロールし、空気の流れを感じさせる着用感を実現します。また、空気孔は素材の表面から皮膚方向へと空気の流れを加速させます。さらにナイキの研究チームは、それぞれの空気孔に対応する形でガーメントの裏面にディンプルを配置することで、皮膚表面での空気循環がより長く持続することを発見しました。
ベーバハニーは次のように話しています。「テストや開発の全段階で、空気孔についてはあらゆる形状やサイズ、配置を試しました。大きいものから小さいものまで、漏斗状の穴を均一に配置すると、肌に向かう空気が最も効率的に集まり、加速することがわかりました。」
この素材を使用したウェアをデザインするにあたって、チームは身体の表面をできるだけカバーし、空気の流れが身体全体で可能な限り促進されるようにするため、長袖のトップスを採用しました。トレイルランニングに長時間挑む際にも快適性が持続するよう、デザイナーは脇の下に大きなカットアウトを入れ、可動性と軽量性を高めました。さらに縫製やトリミングを工夫することで、汗や摩擦の多い部分の擦れを抑えました。

新たなラディカル エアフロー素材の性能を最大限に引き出すため、まったく新しい長袖のアパレルが開発されました。ゆとりのあるレーシングトップは、空気が皮膚に直接流れ込むように設計されています。
¥22,330(税込)
ゾーンごとに配置された空気孔に加え、脇や肘部分には大きな通気孔を設け、動きやすさと通気性を向上させつつ、擦れを抑えます。
クロップド丈にすることで、軽量化に貢献するとともに、下腹部からの通気を促し、ウエストベルトへのアクセスも容易にします。
チームでは、2年以上にわたりフィールドと、条件を整えた研究室で徹底的なテストを重ねました。北カリフォルニアでは、オール コンディションズ レーシング デパートメント(ACRD)のアスリートたちが極限環境下でプロトタイプを実走テストし、そのフィードバックを開発に反映しました。彼らは涼しさと通気性に驚き、涼しい風が肌を通り抜けるこれまでにない感覚があったと話しました。さらに、ナイキ本社内のナイキ スポーツ研究所(NSRL)では、社内の環境調整室を用いた過酷な設定条件下において、この素材がどのように機能するのかを検証しました。オール コンディションズ レーシング デパートメントのアスリートたちは何度もNSRLを訪れ、徹底的にプロトタイプのテストを行いました。試験条件として、酷暑のレースでトレイルランナーが直面するような、急激な気温上昇が再現されました。
NSRLの環境調整室では、アスリートが軽量なDri-FITとラディカル エアフローのウェアをテストし、ナイキが長年培ってきた実績ある素材テクノロジーと新素材の比較を行いました。その結果、高温下、長時間のランニング後において、ラディカル エアフローのプロトタイプは、Dri-FITと比べて汗の吸収・保持量が50%少ないことが明らかになりました。さらに、発汗型マネキンによる評価では、Dri-FITと比較してプロトタイプの方が大幅に通気性が高く、汗の蒸発抵抗も25%低いことが確認されています。(NSRLにおける社内テスト結果による)

NSRLの環境調整室でテストに臨むドリュー・ホルメン
ACRDアスリートで、2025年のラヴァレド・ウルトラトレイル80で優勝したドリュー・ホルメンは次のように話しています。「初めてプロダクトを見たとき、これまでに見たことのないウェアだと感じました。身体に涼しい風が走る感覚に、本当に衝撃を受けました。」
2025年ウェスタンステイツで試作品を着用する、ACRDアスリートのエリン・クラーク。
試作品を着用して、2025年ウェスタンステイツ100マイル エンデュランス ランで優勝し、レース史上2番目に速い記録を樹立したACRDアスリートのカレブ・オルソン。
ナイキ ランニング史上最大規模のフィールドテストとして、ACRDのアスリートたちは2025年のエリートシーズンを通じて検証を行いました。ナイキのデザイナーたちは、レースと実験室から得られる知見をもとに改良を重ね、一般発売に向けて準備を進めてきました。
世界的な気温上昇が進むなか、全身への空気の流れを促す素材開発は、トレイルに限らずあらゆるスポーツで重要性を増していきます。最初のエアバッグの開発以来、空気を操ることは、ナイキのプロダクト開発の歴史と切り離せない関係にあります。だからこそ、ラディカル エアフローの未来は大きな可能性に満ちています。
ベーバハニーは次のように話しています。「ACRDアスリートとの取り組みから得られる知見を、他のスポーツにも応用していくのが楽しみです。この分野における次なるアパレル イノベーションを追求するための私たちの投資は、他に類を見ません。アスリート、イノベーター、そして豊富なリソースが揃っているからこそ、競技の種類やプレーする場所を問わず、アスリートが最高のパフォーマンスを発揮できる新たな冷却ソリューションを生み出し続けていきます。」
オール コンディションズ レーシング デパートメント(ACRD)に所属する日本のアスリート3名のコメントは下記をご確認ください。(五十音順)
小笠原光研選手
「ラディカル エアフローは、風が通る構造によって、特にダウンヒルでスピードを出す場面で涼しく感じます。さらに、水に濡らすと一気に冷却され、暑さの厳しい環境でも快適に走れる効果があります。小さな穴があいた特徴的な見た目ですが、着てみると違和感はなく、長袖なのに肌を露出している部分よりも着ているところの方が涼しく感じます。機能性だけでなく、デザイン性の高さも魅力だと思います。」
甲斐大貴選手
「ラディカル エアフローは、初めて着たときに“何これ?”と驚くほど快適でした。長袖なのに風がしっかり抜けて、とくにスピードを出しているときは非常に涼しく感じます。一方で、登りなどでペースが落ちたときにはしっかり保温もされるので、幅広いコンディションに対応できるのが魅力です。スタート時は低温で日中は非常に暑くなるようなレースでも、この一着で対応できます。さらに、肌に張り付きにくく、ベタつかない点も非常に快適です。」
髙村貴子選手
「ラディカル エアフローは、寒暖差の大きいレースでも快適に着用できるウェアだと感じています。実際に、スタート時が寒く、ゴール時にはかなり気温が上がるレースでも、暑くなりすぎることもなく、下りでも身体が冷えすぎることもありませんでした。また、水をかけても肌に張り付くことがなく、冷却感がありながらすぐに乾くので、最後まで快適な状態で走ることができました。ウェアの機能性の高さを実感できる一着だと思います。」
ナイキ ACG ラディカル エアフローは、6月4日からNIKE.COMと一部のナイキ販売店にて発売予定です。
ナイキ ACG ラディカル エアフローに関する詳細はこちら(https://www.nike.com/jp/acg)をご覧ください。
画像データは下記よりダウンロードをお願いいたします。
https://nike.jp/nikebiz/news/2026/nike20260602.zip
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